年の瀬が近づくと、私たちは自然と年末年始の準備に追われるようになります。大掃除に正月飾りの用意、おせち料理の準備……。毎年当たり前のように行っているこれらの行事ですが、その一つひとつに込められた意味や由来をご存じでしょうか。

今回は、知っているようで知らない年末年始行事の豆知識をご紹介します。

年末になると「今年も大掃除しなきゃ…」という気持ちになりますよね。実はこの習慣は、単なる「年末に片付けたいから」という理由ではなく、古くから「家に神様を迎えるための清め」の意味を伴っています。一年で溜まった煤（すす）を払い、家を清めて新年の神様（歳神様）を迎える準備として行われてきました。

歳神様とは、その年の幸福や恵みをもたらしてくださる神様のこと。きれいに整えられた家にこそ来ていただけると考えられていたため、大掃除は新しい年の幸せを願う大切な行事だったのです。

掃除をして住まいを整えておくことは、暮らしの基本でもあります。特に自然素材の家では、埃や汚れを放っておくと素材の風合いや性能にも影響します。「大掃除＝神様を迎えるため」と意識しつつ、「住まいを整えるケアの時間」としても捉えてみてください。

大掃除を始める理想的な日は、12月13日。江戸時代、この日は「正月事始め」と呼ばれ、旧暦で「鬼宿日（きしゅくにち）」という“婚礼以外は万事が吉”とされる縁起の良い日でした。そんな特別な日に歳神様を迎える準備を始めるのがふさわしいとされ、江戸の町屋でも12月13日に煤払い（大掃除）を行う習慣が広まったといわれています。

とはいえ、すべてを一日で終わらせる必要はありません。鏡を磨くなど、ちょっとしたことでも“事始め”になります。忙しい方は、風水でも重要とされる次の場所を意識して進めましょう。

• 玄関・窓まわり・・・運気の入り口となる場所
• 寝室・・・良い気を取り込み、心身を整える場所
• トイレ・・・金運や健康運に関わる場所

なお大掃除は、28日頃までに済ませるのが理想です。

新しい年を迎えるために欠かせないのが、玄関先を彩る門松や、しめ縄・しめ飾り、そして鏡餅といった正月飾り。どれも「お正月だから飾るもの」と思いがちですが、本来は歳神様をお迎えし、家の中を整えるための大切な道具です。

門松は、歳神様が降りてくる際の「目印」となるお正月飾りです。「松竹梅」でつくられることが多く、それぞれに縁起の良い意味が込められています。

• 松・・・神様が宿る木とされ、不老長寿の象徴
• 竹・・・成長の早さから繁栄・長寿を願う縁起物
• 梅・・・紅白でおめでたい・開運と出世の象徴

しめ縄やしめ飾りも、歳神様をお迎えするためのお正月飾りですが、その役割は少し異なります。

• しめ縄・・・神聖な場所を示す縄
• しめ飾り・・・しめ縄にお正月の縁起物を飾り付けたもの

しめ縄は、神社でも見られるように「神聖な場所と俗世を分ける結界」を意味します。そのしめ縄に縁起物をあしらった“しめ飾り”を玄関に飾ることで、「この家は清められ、神様をお迎えする準備ができています」という印になります。

鏡餅は、歳神様へのお供え物です。「鏡餅」という名称は、昔の丸い銅鏡に餅を見立てたことから「鏡餅」と呼ばれるようになったという説があります。

2段の丸餅は「太陽」と「月」を表し、「福が重なる」「円満に年を重ねる」という願いが込められています。上に飾る橙（だいだい）は「代々栄えるように」という縁起ものです。

飾る時期

12月13日以降であればいつでも良いですが、29日は「二重苦」に通じるため、31日は「一夜飾り」といって、歳神様に対して失礼にあたるとされているため避けましょう。末広がりで縁起が良い“28日”に飾るのがおすすめです。

片付ける時期

地域によって異なり、関東や九州では1月7日、関西では1月15日というケースが多いです。 外した飾りは「どんど焼き」でお焚き上げをするのが伝統。どんど焼きに行けない場合は、感謝の気持ちを込めて新聞紙などに包み、塩で清めてから処分します。

鏡餅は1月11日の「鏡開き」で下げ、神様の力が宿ったお餅をお汁粉やお雑煮にしていただくことで、一年の健康を祈ります。

お正月のごちそうといえば、おせち料理。黒豆、数の子、紅白かまぼこなど、料理にもひとつひとつ意味が込められています。ここでは代表的なものをピックアップしてご紹介しましょう。

• 黒豆・・・まめ（勤勉・健康）に働けるように
• 数の子・・・子孫繁栄
• 紅白なます・・・紅白の色が水引に通じ、祝い事の縁起物
• 昆布巻き・・・「よろこぶ」の語呂合わせ
• 海老・・・腰が曲がるまで長生きできるように
• 伊達巻き・・・巻物に似た形から、学問や文化の発展を願う意味
• 紅白かまぼこ・・・紅＝魔よけ・よろこび、白＝清浄という意味
• 栗きんとん・・・金運アップ
• れんこん・・・将来の見通しが良くなるように

家族でおせちを囲むことは、「今年も健やかに過ごせますように」という願いを共有する時間でもあります。これから住まいづくりをされるご家庭は、ぜひ「リビングでお正月を迎える」「家族団らんでお雑煮を食べる」など暮らしのシーンも思い描いてみてください。

1月1日の元日は「大正月」と呼ばれますが、1月15日あたりに「小正月」と呼ばれる、もう一つのお正月があることをご存じでしょうか。年末の準備から松の内（正月飾りの期間）まで続いてきた正月行事を締めくくる日で、地方によっては“女正月”として、忙しかった女性が一息つく日とも言われています。

小正月の主な風習は、次の通りです。

• 小豆粥（あずきがゆ）を食べる・・・赤い色で邪気を払い、一年の健康を願う
• どんど焼き・・・正月飾りを焚き上げ、家内安全や無病息災を祈る

小正月は、慌ただしかった正月を終え、「暮らしを整え直す節目」。3が日をゆったり過ごしたあと、小正月を機に飾りを片付け、新しい年の生活を整える……そんなリズムを持つと心もすっきりします。

年末の大掃除で一年の汚れを落とし、門松やしめ飾りで神様を迎え、鏡餅をお供えし、おせち料理で祝う。そして小正月で一区切りをつけ、日常へ戻る。この一連の流れは、暮らしをリセットし、心を整えるための大切な時間です。

また、こうした行事を心地よく取り入れるためには、住まいに飾りの「置き場所」を設けることも大切です。玄関には門松やしめ飾りのスペースを、室内には和室や和モダンのリビング、床の間風の一角など、正月飾りが映える場所を用意しておくと、季節のしつらえが自然に暮らしに馴染みます。

HARMONYが大切にしている自然素材の家づくりは、こうした季節の行事や自然のリズムを暮らしに取り入れることにも通じています。木の温もりに包まれた空間で、家族とともに正月飾りを整え、おせちを囲む。そんな穏やかな時間こそ、忙しい現代における「豊かさ」なのかもしれません。

どうぞ今年の年末年始は、一つひとつの行事に込められた意味を思い返しながら、丁寧に過ごしてみてください。きっと新しい一年が、よりすてきなスタートになります。