2026.9.04 金
5年前の住宅価格と比べてみた
「家の値段って、本当にそんなに上がっているんですか?」
最近、お客様からこのようなご質問をいただくことが増えました。ニュースでは「物価高」「資材高騰」「人件費上昇」といった言葉をよく耳にしますが、実際に家一棟でどれくらい変わったのかは、なかなかイメージしにくいと思います。
そこで今回は、HARMONYで実際にご契約いただいた、条件の近い2棟の注文住宅を比較してみました。
ほぼ同じ条件の平屋を、約5年前と比べてみました
| 2021年ご契約 | 2026年ご契約 | |
|---|---|---|
| 契約時期 | 2021年9月 | 2026年9月 |
| 建物 | 平屋3LDK・約25坪 | 平屋3LDK・約25坪 |
| 契約金額(税込) | 18,279,224円 | 21,618,850円 |
※どちらも本体価格・オプション・付帯工事費を含んだ金額です。
その差は3,339,626円、率にすると約18.3%です。細かな仕様の違いはありますが、建物としてはかなり近い条件です。それでも約5年間で、約333万円の差が生まれました。
調べていくと、理由は「木材が高くなったから」だけではありませんでした。この5年間に、さまざまな出来事が重なっています。
この5年間で住宅価格に影響した主な出来事
| 時期 | 出来事 | 住宅への主な影響 |
|---|---|---|
| 2021年 | ウッドショック | 柱・梁・合板など木材価格の上昇 |
| 2021〜22年 | 部品不足・物流の混乱 | 給湯器などの供給遅延、輸送費の上昇 |
| 2022年〜 | 資源・エネルギー価格の上昇、円安 | ガラス・金属・セメント・樹脂などの製造コスト上昇 |
| 2022年〜 | 住宅設備メーカーの価格改定 | キッチン・浴室・トイレ・サッシ・ドアなどの値上がり |
| 2023年〜 | 建設資材価格の高止まり | 一度上がった価格が元の水準に戻らない |
| 2021〜26年 | 職人さんの人件費上昇 | 大工・基礎・電気・設備などの工事費上昇 |
| 2024年 | 建設・物流の「2024年問題」 | 働き方改革に伴う物流費・工期への影響 |
| 2025年 | 省エネ基準の適合義務化・建築基準法改正 | 住宅に求められる性能・設計・申請内容の変化 |
| 2026年 | 中東情勢・いわゆる「ナフサショック」 | 石油由来の建材・設備への供給・価格への影響 |
ここからは、それぞれを簡単にご説明します。
2021年:ウッドショックで木材価格が上昇
新型コロナウイルスの影響でアメリカの住宅需要が急増した一方、世界的なコンテナ不足で物流が混乱し、輸入木材の価格と海上輸送費が大きく上昇しました。
林野庁によると、輸入材が不足したことで国産材に需要が集中し、国産材の価格まで上昇しました。柱や梁、合板など、木造住宅の基本となる部分に幅広く影響しています。
なお、今回比較した1棟目は2021年9月のご契約で、すでにウッドショックが起きていた時期です。それでも、そこからさらに約333万円上がっているのが、今回のポイントです。
【出典:林野庁「令和3(2021)年の木材不足・価格高騰(いわゆるウッドショック)の状況」】
2021〜2022年:部品不足と供給の混乱
同じ頃、世界的なサプライチェーン(原材料の調達から製造・お届けまでの流れ)が混乱し、家庭用給湯器などで部品不足による供給遅延が発生しました。国土交通省も住宅業界へ対応を求めています。
「これで○円上がった」と直接計算できるものではありませんが、代替品の手配や工期の調整など、住宅会社だけではコントロールできない調達リスクが大きくなった時期でした。
【出典:経済産業省「給湯機の生産・出荷・在庫の動向」/国土交通省「家庭用給湯器の供給遅延について」】
2022年〜:資源・エネルギー価格の上昇と円安
2022年には、ウクライナ情勢などを背景に原油・天然ガス・石炭などの資源価格が上昇し、さらに円安も進みました。日本銀行も、資源高と円安によって輸入物価が上昇したことを説明しています。
エネルギー価格が上がると、材料そのものだけでなく、工場の電気代、加工の燃料代、運搬のトラック燃料代にも影響します。
- ガラス:AGCは原燃材料・物流費・円安などを理由に、建築用ガラスの価格を改定
- 基礎(コンクリート):太平洋セメントは石炭価格や輸送コストの高騰を受けてセメント価格を改定し、石炭価格サーチャージ制度も導入
木造住宅であっても、基礎や窓など木材以外の部分にも影響が広がりました。
【出典:日本銀行 2022年総裁記者会見要旨/AGC・太平洋セメント 価格改定発表】
2022年〜:住宅設備メーカーも相次いで価格改定
キッチン、お風呂、トイレ、サッシなどは、住宅会社が各メーカーから仕入れて設置しています。そのメーカー側でも価格改定が続きました。
たとえばLIXILは2021年12月、原材料価格の上昇を理由に、サッシ・玄関ドア・トイレ・ユニットバス・キッチンなど幅広い商品の価格改定を発表し、その理由として「もはや企業努力のみで対応することが困難」と説明しています。TOTOやPanasonicでも、同時期に原材料費・物流費などを理由とした価格改定が行われています。
※メーカー希望小売価格の改定率と、住宅会社の実際の仕入価格の上昇率は同じではありません。ここでは、業界全体でコスト上昇が起きていたことの一例としてご紹介しています。
【出典:LIXIL・TOTO・Panasonic 各社価格改定発表】
2023年〜:価格は元の水準まで戻らなかった
「ウッドショックが落ち着いたなら、元に戻るのでは?」と思われるかもしれません。
確かに木材価格はピーク時からは下がりましたが、林野庁によると、2023年時点でもウッドショック前(2020年)と比べると高い水準でした。国土交通省も、建設資材価格は2021年後半から高騰し、2023年以降も全体として高止まりしていると整理しています。
【出典:林野庁「木材価格の動向」/国土交通省「主要建設資材の価格推移」】
職人さんの人件費も上昇しています
家は、大工さん・基礎屋さん・電気屋さん・水道屋さん・屋根屋さん・左官屋さん・クロス屋さんなど、多くの職人さんの手で完成します。
住宅工事の単価そのものではありませんが、建設業界の賃金の参考指標となる国土交通省「公共工事設計労務単価」(全国全職種の加重平均)は、次のように推移しています。
| 2021年3月 | 20,409円 |
| 2026年3月 | 25,834円(約26%上昇) |
職人さんの賃金を適正に上げ、これからも家をつくる担い手を確保することは、住宅業界を続けていくために欠かせないことです。
【出典:国土交通省「公共工事設計労務単価」】
2024年:建設業と物流の「2024年問題」
2024年4月から、建設業やトラックドライバーにも時間外労働の上限規制が本格的に適用されました。働く環境を良くするための大切な制度ですが、国土交通省は、対策をしなければ2024年度にトラックの輸送能力が約14%不足する可能性があると試算していました。
建材は現場まで運んで初めて使えます。実際にAGCは2024年、物流関連費の上昇を理由に建築用ガラスの物流関連費を改定しています。「運ぶ費用」も、この5年で変わりました。
【出典:国土交通省「物流の2024年問題」/AGC 物流関連費改定発表】
2025年:住宅に求められる基準も変わりました
2025年4月から、原則すべての新築住宅に省エネ基準への適合が義務付けられ、木造住宅の構造規定や建築確認の手続きも見直されました。
ただし、HARMONYでは法改正以前から一定以上の断熱・気密・構造性能を確保しているため、「法改正で一気に高くなった」という単純な話ではありません。住宅業界全体の背景の一つとしてご理解いただければと思います。
【出典:国土交通省「2025年4月から省エネ基準適合の全面義務化や構造関係規定の見直し」】
2026年:いわゆる「ナフサショック」
ナフサとは、原油からつくられる石油化学製品の原料です。塗料、塩ビ管、コーキング材、断熱材、接着剤、樹脂製品など、住宅で使う多くの材料がナフサ由来です。
2026年、国土交通省は中東情勢の変化により、ナフサ由来の建設資材に「供給の偏りや流通の目詰まり」が起きているとして、公共工事での対応を始めました。
一方で経済産業省は、日本全体として必要な供給量は確保できる見込みと説明しています。必要以上に不安になる必要はありませんが、住宅の材料が世界情勢の影響を受けていることは事実です。
また2026年も、LIXILやAGCがエネルギーコスト・原材料・物流費・円安などを理由に価格改定を発表しています。2021年に一度だけ値上がりしたのではなく、違う理由による値上がりが何度も重なってきたのです。
【出典:国土交通省「中東情勢の変化による建設資材への影響に係る直轄工事の対応」/資源エネルギー庁「エネルギーを巡る最近の動向」/LIXIL・AGC 2026年価格改定発表】
HARMONYだけが高くなったのでしょうか?
国土交通省の資料に掲載されている「木造住宅建築費指数」(一般財団法人経済調査会)では、東京・近郊のモデル住宅の本体工事費が次のように推移しています。
| 2021年 | 比較年 | 上昇率 | |
|---|---|---|---|
| 木造住宅建築費指数(東京・近郊) | 1,996万円 | 2,393万円(2025年) | 約19.9% |
| 今回比較したHARMONYの2棟 | 1,827.9万円 | 2,161.9万円(2026年) | 約18.3% |
地域も仕様も工事範囲も違うため、直接比較はできません。ただ、住宅の建築費そのものが全国的に上がっているという大きな流れは、公的な資料からも確認できます。
【出典:国土交通省資料「木造住宅建築費指数の推移」】
住宅会社だけではコントロールできない要因が重なっています
ここまで見てきたように、住宅価格が上がった背景には、木材、ガラス、金属、コンクリート、石油化学製品、住宅設備、エネルギー、物流、職人さんの人件費、為替、世界情勢、法制度など、本当に多くの要因があります。そして、そのほとんどは住宅会社一社だけではコントロールできないものです。
国も2024年に建設業法を改正し、資材価格の高騰を請負価格へ適切に反映し、職人さんの労務費にしわ寄せがいかないようにする仕組みを整えています。
適正な価格で仕入れ、職人さんに適正な工事代金を支払い、品質を落とさずに家を建てる。そして会社として続いていき、お引き渡し後もお客様の暮らしを守り続ける。そのために、どうしても価格へ反映しなければならない部分があるのが実情です。
【出典:国土交通省「建設業法・入契法改正について」】
「これからもっと上がるから急いでください」とは言いません
この記事は、「家はどんどん高くなるから今すぐ契約を」という話をしたいわけではありません。これから住宅価格が上がるのか、落ち着くのか、正確に予測することは私たちにもできません。
大切なのは、今の住宅価格をきちんと知ったうえで、ご家族に合った家づくりを考えることだと思っています。
5年前と同じ予算で、まったく同じ家を建てることは難しくなりました。だからこそ、
- 何にお金をかけたいのか、何なら削っても暮らしに影響がないのか
- 土地と建物に、それぞれいくら使うのか
- 住宅ローンはいくらまでなら無理がないのか
を一つずつ整理することが、これまで以上に大切になっています。家を小さくする、すべてを諦める、予算を無理に増やす――それだけが答えではありません。
家づくりで一番怖いのは「知らないまま進めること」
約5年で約333万円。決して小さな金額ではありません。
でも、「なぜ高くなったのか」を知ると、少し見え方が変わるのではないでしょうか。住宅会社が突然333万円を上乗せしたわけではなく、この5年間で材料・設備・エネルギー・物流・人件費・世界情勢が少しずつ変化し、それが一棟の住宅に積み重なった結果です。
だから私たちの役割は、「高くなりました、仕方ありません」で終わらせることではなく、今の価格の中で、どうすればお客様の希望を叶えられるかを一緒に考えることだと思っています。
「今なら、いくらくらいで建てられるんだろう?」
「自分たちの予算だと、どんな家が建てられるんだろう?」
そんな疑問があれば、まだ土地が決まっていなくても大丈夫です。まずは今の住宅価格を知るところから、一緒に考えてみませんか。
参考資料
- 林野庁「令和3(2021)年の木材不足・価格高騰(いわゆるウッドショック)の状況」
- 林野庁「木材価格の動向」
- 国土交通省「主要建設資材の価格推移」
- 国土交通省「公共工事設計労務単価」
- 国土交通省「物流の2024年問題」
- 国土交通省「2025年4月から省エネ基準適合の全面義務化や構造関係規定の見直し」
- 国土交通省「建設業法・入契法改正について」
- 国土交通省「中東情勢の変化による建設資材への影響に係る直轄工事の対応」
- 国土交通省資料「木造住宅建築費指数の推移」(一般財団法人経済調査会)
- 資源エネルギー庁「エネルギーを巡る最近の動向」
- 経済産業省「給湯機の生産・出荷・在庫の動向」
- 日本銀行 2022年総裁記者会見要旨
- LIXIL、TOTO、Panasonic、AGC、太平洋セメント 各社価格改定に関する発表

執行役員
松井 司
TSUKASA MATSUI





